デスクの横に、赤い足。英語版『犬神家の一族』を飾る楽しみ

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横溝正史原作の映画『八つ墓村』が、いま上映されている。清水崇監督が手がけ、尾上松也が金田一耕助を演じる新たな映画化だ。

こうして横溝作品が新しい姿で登場する今、紹介したくなった一冊がある。同じ金田一耕助シリーズの『犬神家の一族』。その英語版『The Inugami Curse』だ。

私はこの本を、デスクの横に飾っている。今回紹介したいのは、物語の感想ではなく、その装丁。

濃い青を背景に、淡い色の大きな円。そして、そこから突き出す二本の赤い足。『犬神家の一族』の映画を知っている人なら、このポーズだけで、あの場面が浮かぶのではないだろうか。

顔も、人物の全身も描かれていない。それでも「あ、犬神家だ」と伝わる。見慣れたイメージが、ずいぶん大胆に整理されている。

あの足が、赤くなるだけで

特に気に入っているのは、足に赤を使っているところ。

肌の色で描けば、もっと具体的な場面の再現に近づきそうだ。しかし、この表紙では鮮やかな赤が選ばれている。濃い青との組み合わせによって、足はどこかポスターの図案のようにも見える。

もちろん、不穏さはある。けれど、それと同時に、デスクの横に置きたくなる格好よさがある。

赤い著者名やタイトルも含めて、表紙全体の色数は抑えられている。少ない色と形で、作品の印象を強く残す。その潔さが好きだ。

日本の古典が、モダンな顔になる

もう一つ面白いのは、日本の作品だからといって、いかにも「和風」という装丁にはなっていないことだ。

少なくとも私には、和柄や筆文字で日本らしさを説明するデザインには見えない。作品を象徴する場面を取り出し、色と構図で見せている。

それでいて、『犬神家の一族』らしさはしっかり感じられる。

日本で親しまれてきたミステリーが、英語のタイトルをまとい、モダンなグラフィックとして目の前にある。知っている作品なのに、少し違う顔を見せてくれる。その距離感が、海外版の本を手にする楽しみなのかもしれない。

あの場面を知らない人には、この二本の足がどんなふうに見えるのだろう。そう考えるのも楽しい。

読む本を、眺める本としても

本は読むものだけれど、表紙を眺める楽しみもある。

私はこの一冊を、背表紙ではなく表紙が見えるように、デスクの横に飾っている。小さなポスターを置くような感覚だ。

英語の本というと、「読めるかどうか」をまず考えてしまう。でも、好きな作品の海外版を、装丁が気に入ったという理由で持つのもいいと思う。

本棚に収めるだけでは気づかなかった色や形が、表紙をこちらに向けると、部屋の中で存在感を持ち始める。

二本の赤い足を見るたびに、日本のクラシックな作品が、今の暮らしの中にも似合うことを感じる。私にとって『The Inugami Curse』は、そんな一冊だ。

ちなみに同じテイストでシリーズ化している。


紹介した本:『The Inugami Curse』
著者:Seishi Yokomizo(横溝正史)
レーベル:Pushkin Vertigo
ISBN:978-1-78227-503-9

※装丁は版によって異なる場合があります。この記事では、掲載写真のペーパーバックを紹介しています。

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